これからブログを書き始めよう。そう思った時に、ふと思い出したことがある。
小学校5年生の、球技大会の日のことだ。
その日、私たちのチームはバスケットボールの試合に参加した。
試合中、持っていたボールをバン!と私は相手に奪われた。その後、他校のチームに私たちは敵わず、試合結果は惨敗であった。
チームの皆は悔しさで、加えて私はボールを奪われたショックで、体育館のステージ脇の階段で皆でワンワン泣いたのである。
その帰り道のことだった。
ハチマキを頭に巻いたまま、いつもの通学路を1人でとぼとぼと歩いていた。すると、後ろから「こんにちは」と声がした。
振り向くと、1学年下の女の子である。当時いつも一緒にいた私の幼馴染と、同じ習い事に通っていた子だった。顔は知っているが直接話したことはない。
「こんにちは」と私は返した。
すると、その子は黙ってそのまま、私の横について一緒に歩き出した。
団地の中の、道路脇の一本道だった。しばらく2人で黙って歩いた。
やがて、分かれ道がやってきた。その子の家は右側の団地。私はまだまっすぐである。
「さようなら」とその子が言った。
「さようなら」と私は返した。
すると、その子は団地に向かって歩いて行った。
それだけである。たった数十メートルの出来事だった。
どうしてその子が急に一緒に歩き出したのか、すぐに私は理解できなかった。もしかして、私が落ち込んでいる様子を見て、そばにいてくれたのだろうか?そう気づいたのは、別れて数分経ってからである。
恐らくその2、3年後のことだったと思う。
その子のお父さんが、ガンで亡くなったと幼馴染から聞いた。
その話を聞いてしばらくして、あぁ、もしかして…と思った。
一緒に歩いたあの時、もしかしたらお父さんが既に闘病中だったのだろうか?
当時、寂しさや悲しみのようなものを、その子も感じていたのだろうか?
もちろん、実際どうだったかは私にはわからない。しかしもしそうでなかったとしても、あの時の、その子が持っていた優しさをふと思ったのである。
お父さんが亡くなった時、その子は何を感じたのだろうか。
それから今まで、20年近く歳月が経った。当時の記憶は、今でも私の中に残っている。
あの子は今、どこで何をしているだろう。