24歳の時に、リゾートバイトを始めた。
リゾートバイト(以下、略してリゾバと呼ぶ)とは、観光地にある施設などで、住み込みで働く仕事のことである。
私がリゾバを始めた理由は、「働く練習のため」だった。
2020年の年末、初めてリゾバに応募した。派遣会社から内定連絡が来たのはお正月明け。その2日後に、埼玉の実家を飛び出した。

リゾバを始めるまで
なぜ働く練習を始めることにしたかというと、当時私は半分ニートのようになっていたからである。
20歳の時、在籍していた芸術大学で人生初めての挫折をした。強烈に襲ってきた劣等感にパニックになって、精神科に通い始めた。その中でも、なんとか学内で自信を取り戻したと思った芝居の道に進もうと思ったら、卒業してすぐにそれも挫折した。ショックだった。しかし人前が苦手だったから、これからは自分に合っている道に進めると思ったら少しほっとした。
しかし安心したのも束の間だ。2ヶ月近く経った頃、謎の吐き気が止まらなくなった。後で分かったが、これから自分がどう生きていけば良いのかわからなくなっていたから、焦りによる心因性のものだったらしい。
気づけば、同級生たちは一生懸命働いて生活している。
当時の私は実家暮らし。精神科通いの状態に甘えて、将来のことをまともに考えていなかった。仕事といえば、ごくわずかなコンビニアルバイトと、一時期おこづかい程度のTV・映画のエキストラをしていただけ。社会というものに加われず、出かける度に人目が怖くなってきた。
秋が終わる頃になって「このままではマズイ」と初めて気づいた。
既卒・ニート向けの就職エージェントで求人探しを始めた。しかし就職することを考えると、どうしても体が拒否してしまう。これじゃぁ、本当に好きな仕事じゃないと働けない。でもそんなものなんてすぐに見つからない。だったらまず、フルタイムで働く練習をしよう。そう思って、今の自分ができる仕事は何だろう、と考えた。
リゾバを選んだ理由
とにかくストレスに私は弱かった。満員電車での通勤も無理。そんな自分でも働けるのはどんな環境だろう?そう考えた時、ポン、と沖縄の離島の風景が頭に浮かんだ。
当時、私の姉がリゾバをしていた。住込バイトは私も学生時代に経験したことがある。離島も好きで、一人旅をしたこともあった。
リゾバの派遣会社で、沖縄の離島の求人を探した。すると、自分が望んでいた条件にぴったり合致する案件があった。求人ページに載っていたのは、青い海、緑の草原、そして草を喰む馬の写真。
「ここだ!」と思った。すぐに電話応募した。派遣会社の、年末最後の営業日のことである。
それが沖縄県の与那国島だった。
当時は名前すら知らなかった。選んだところが、たまたま日本のいちばん西の端だった。
そんなこんなで、私は3ヶ月間の与那国島生活に飛び出したのである。

降り立った与那国島は、あまりにも遠い絶海の孤島だった。360度海を見渡しても、この島にいる自分たちの他に人が見当たらない。まず他の島すら見当たらない。そして日本も見えない。
しかし、そこでの生活が思いがけないものだった。
後で思えば、私にとっての人生の変わり目がその時だったのである。与那国島生活で、「旅が好き」「知ることが好き」という、自分なりの人生を切り開くスイッチが入った。
<続く>
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