働く練習のために、与那国島のリゾバに飛び出した時の記憶は強烈だ。それまで自分が大人になることをまともに考えていなかったから、既に自分がそのタイミングであることに気づいて、焦りでパニックになった時期だった。
2021年のお正月が明けたタイミングで、リゾバの派遣会社から内定連絡が来た。
ダンボールひとつに、生活に必要であろう荷物を適当に詰めて島へ送った。
実家を出たのは、内定連絡が来てから2日後の夜。翌朝の便で、成田空港から経由地の石垣島へ向かった。
成田空港を出たのは、2021年1月8日の朝だった。その日は一都三県にコロナの緊急事態宣言が出された日で、そんな地元から逃げるように離陸した。
石垣島から与那国島へは、琉球エアーコミューターで向かった。大した距離ではないからか、さして高度も上がらない。当日は乱気流で、雲を切り裂くように小型飛行機は走った。
雲の中を強行突破するように、ガタガタと飛行機は進む。初めて感じる揺れの中で窓の外を眺めながら、その時の状況が、まるで今の自分の心みたいだ、と思ったのを覚えている。
